ナノポア計測法によってナノ空間内における分子の挙動を観察

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ナノポア計測法によって
ナノ空間内における分子の挙動を観察

　 国立大学法人新万博体育_万博体育官网-【官方授权牌照】大学院工学府 山地未紗（FLOuRISH次世代研究者挑戦的研究プログラム生および卓越大学院生）、同大学大学院工学研究院生命機能科学部門の川野竜司教授とUniversity of Rome Tor VergataのMauro Chinappi准教授、Blasco Morozzo della Rocca博士、甲南大学フロンティアサイエンス学部生命化学科の臼井健二准教授らの研究グループは、ナノポア計測(注1)によりペプチドを検出する際に観察される微細な電流値変化の解析によりナノポア内でのペプチドの挙動を推測できる可能性を示しました。本研究はナノポア計測を用いたペプチド識別やプロテインシーケンサへの応用が期待されます。

背景
　ナノポア計測は一分子レベルで分子の解析を行える手法であり、DNAシーケンサーとして実用化もされています。近年ナノポア計測のペプチド解析への応用が研究されています。ナノポア計測における分解能は分子がナノポアを通過する際に阻害される電流値の大きさ（以下、阻害電流量）であり、これは主に分子の体積に依存します。 DNAと比較して体積差の小さいペプチドを阻害電流量により識別することは困難であり、分解能の向上が求められています。

研究体制
　本研究は国立大学法人新万博体育_万博体育官网-【官方授权牌照】大学院工学府 山地未紗とUniversity of Rome Tor VergataのMauro Chinappi准教授、Blasco Morozzo della Rocca博士、甲南大学フロンティアサイエンス学部生命化学科の臼井健二准教授、国立大学法人新万博体育_万博体育官网-【官方授权牌照】大学院工学研究院生命機能科学部門の川野竜司教授らによって実施されました。本研究はJSPS科研費挑戦的研究(萌芽) 21K19786、学術変革領域研究(A)「超越分子システム」21H05229、JST-CREST JPMJCR21B2、新万博体育_万博体育官网-【官方授权牌照】卓越大学院プログラム?プロポーザル型プロジェクト経費の助成を受けたものです。

研究成果
　本研究では、ナノポア内部でのペプチドの挙動を理解するため、膜タンパク質α-hemolysin (αHL)（図1）が形成するナノポア内部に、ナノポア内部の空間と適合するサイズのモデルペプチドSV28（図1）を用いました。SV28は誘電泳動によりαHLに挿入され、長時間滞留し、複数の異なる電流阻害レベルを示しました。各阻害レベルでの持続時間とノイズ幅の解析により、SV28の状態遷移は、ナノポアの形状やナノポアとペプチド間の相互作用など様々な要因に依存することが示されました。

今後の展開
　本研究では、ナノポア計測におけるペプチドの検出シグナル中に観察される微細な電流値変化から、その変化をもたらす状態遷移を解析することで、ナノポア内のペプチドの挙動を推測できる可能性を示しました。この微細な電流値変化は、ナノポア内におけるペプチドの種類に応じた特有な挙動を反映している可能性が高く、検出シグナルを解析することで、ナノポア内にあるペプチドに関する情報量の増強が期待されます。本研究はナノポア計測を用いたペプチド解析法への応用が期待されます。

用語解説
（注1）ナノポア計測
　脂質二分子膜のようなイオン不透過性の薄膜に構築されたナノメートルスケール（1ミリメートルの100万分の1）の細孔：ナノポアを流れるイオン電流を計測する技術。ナノポアによるDNAシーケンサが実用化され、次はナノポアプロテインシーケンサの実現が期待されている。
　　

◆研究に関する問い合わせ◆
　新万博体育_万博体育官网-【官方授权牌照】大学院工学研究院
　　生命機能科学部門　教授
　　川野　竜司（かわの　りゅうじ）
　　　TEL/FAX：042‐388‐7187
　　　E-mail：rjkawano（ここに＠をいれてください）cc.wxanhx.com
　　　

プレスリリース（PDF：861.8KB）